秋の蚊

秋の蚊は獰猛な気がするね。

子孫を残すため、最後の力を振り絞っているのか。
夏の蚊とは何かが違う。

血を吸うのはメスの蚊だけだと聞いた。
オスは血を吸わないのだそうだ。

私が散々叩いてきた蚊はメスの蚊だったろうが、
時々紛れてオスも叩き潰したに違いない。申し訳ない。

メスの蚊は獰猛に寄ってくる。
「お腹の子のためにはね、血が必要なの・・」
と上目遣いの潤んだ目で近寄ってくるのだ。
「口座にも振り込んでくれない?」

毎日毎日、外に出れば蚊に刺される。
室内でも刺される。
庭の草むしりなどしようものなら大群で押し寄せてくる。

叩いてもキリがない。ほんの一瞬の隙で刺してくる。
場所も選ばない。尻まで狙う。

何故だ、予防スプレーをしているのに・・。
目にも留まらぬ速さで動いているのに・・。

ああああ!かゆいかゆいかゆいかゆいかゆい
かゆいかゆいかゆいかゆいかゆいかゆいゆかいゆかい・・

ありり、ゆかいになってきたね!ヒヒヒヒ

なんて、一文字変えたってゆかいになんかならなくて、ただかゆい。

血ならあげるから、かゆい液とか入れるのやめてほしい。
毎週蚊曜日は10%増量で吸ってもいいから、かゆい液を入れないでほしい。
ギブアンドテイクいらない。

かゆいかゆいかゆいかゆい・・


-----


病室。
私の大好きな人は去ってしまった。
そこにはさっきまで息をしていたあなたがいる。

蚊が一匹飛んでいた。

血をたらふく吸って重そうな身体で。

パン!

私は容赦なく叩き潰した。
手には潰れた蚊と赤い血。

「誰の血・・?」

ふと見ると、あなたの腕は蚊に刺されてぷっくりしていた。

この血はあなたの血だ。

あなたの血が温かいままで、この蚊の中にいたのか。

私は手についた血をただ見つめた。
手についた血は、冷たいのか温かいのか分からなかった。

私は蚊の、抜けた足と潰れた体を払って、手を舐めた。

不味い鉄っぽい味がして、何か泣けてきた。


------



ふとそんな想像をしていると、
一匹の蚊がぷんと飛んでいる。

私は容赦なく叩き潰す。

手には潰れた蚊と赤い血。

私の腕がぷっくりしている。

かゆい。
[PR]
名前
URL
画像認証
削除用パスワード
by ayajijo | 2012-10-03 20:15 | 妄想とか | Comments(0)