フランス旅行記10~パリで一文無しの巻~
2011年 10月 24日
小学生の頃母が私に、
「明日持っていくぞうきん、あんたは絶対忘れるんだから、今のうちにカバンに入れておきなさい。」
と言った。
やや?まだ忘れてもいないのに絶対とは失礼な!
私は「うん、後でやる。」と言って漫画を読んでいた。
母「後でやるって言って、あんた絶対忘れるんだから、今入れなさい。」
私「大丈夫、後でやる、絶対忘れないから。」
母「そう言って絶っ対あんたは忘れるんだから入れなさい!」
私「後でやる、絶っ対忘れないもん!」
母「あんたは忘れる人なんだから。」
私「もう絶っっ対忘れない!忘れない人になった!」
兄登場「お前そう言って絶対忘れるぞ。」
私「(ぬなっ!)絶対忘れません~。絶対に絶対に絶~対に忘れません~。」
兄・母「やれやれ、そういってこの子は忘れるんだから。」
私「忘れませんたら忘れません、絶対忘れません~!
そんな何回も同じこと言われなくても分かってます~!」
と散々生意気な口を利いておきながら、次の日、ぞうきんを忘れた…。
学校から帰った私に母は一言。
「ほらね、あんただもの。」
<六日目~一文無し~>
Cさんを見送り、
私たちは荷物を郵送するため、クロネコさんに立ち寄ることに。
地下鉄北駅:Gale du Nord
地下鉄やRERへの乗り継ぎができ、多くの人が行き交う駅。
この日はパリのホテルをチェックアウトし、
人形劇のフェスティバルが開催されているシャルルビル・メジェール市に移動するので、私たちはスーツケースを持ち歩いていた。
Hさんのスーツケースは、大きめの最新型。とても軽量で車輪もしっかりしている。
私のスーツケースは、知人が「重たいから捨てる」と言ったのをもらったもので、
空の状態でも重たい。捨てたくなるくらい重たい。
そしておまけに車輪が内側についているので、安定が悪い。
おまけのおまけに、旅に出て早々に車輪のゴムがはがれてしまい、キュルキュル鳴って更に重くなった。
友だちがスーツケースを倒さずに颯爽と歩く姿がエレガンスでうらやましい。
私のスーツケースは、まるでグランドで引くタイヤだ。重いコンダーラだ。
石畳の上スーツケースを引くと、あっという間に手に豆ができた。
あ~重たいね~。やっぱ新しいの買えばよかったよ。
パリに来てからも何度も買おうかと思ったのだが、節約したかったのと、
古いケースの捨て方が分からないので、今回はガマンだ!
あ~しかし重たいね~。
おや、地下鉄に乗ろうとしたら、若い女性がやってきて、重いスーツケースを一緒に持ってくれたよ。
親切だな。ありがとう。
フランス、親切な人が多いな。
こないだも重いカバンを持ってあげてる人がいたよ。
今日も地下鉄、混んでるな。ぎゅうぎゅうだ。
なかなか奥に入れないな。あ、友だちは何とか乗れたみたいだね。よかったよかった。
あれ、あの…一緒に持ってくれてるスーツケース、もう置いてくれていいんだけど・・
ああ、でもこんな混んでる中で持ってしまったから、置くと彼女の足か私の足に乗ってしまうのかな。
重いのに一緒に持ってもらっちゃって申し訳ありませんね。
優しい人だな、ありがとう。
あ、地下鉄の扉がしまるよ、
あ、やっとスーツケース置いてくれた、
あれ?あなたは降りるの?
あれあれ?車内、混んでると思ったら空いてるね。
皆いきなり降りちゃったね。どうしたのかな。
私のカバンを持つために来てくれたのかい?親切にありがとう!
・・でも、何だか違和感。妙な違和感。
親切に違和感。さっきの窮屈さに違和感。
・・・・
「あ・・財布がない・・」
何度確認しても財布がない。財布がないんだ。
頭がパニくる。えっと、何で、いつ、今、女の人、スーツケース、重い、
他にも人、私を囲んで、押してきて、窮屈、財布、
全財産、人形劇、貯金、私、お金、ないから、私、一文無し・・
「あ!カメラ!携帯電話!」と思ったらそれは別に入れていたので無事。
あ~よかっ・・いや!良くない!
「やられた!スリだ!」
周りの人が同情の目を向けてくる。
そして入り口に座っていたおばさんが、
「多分今の子達がやったのよ。」と目と指差しで教えてくれる。
そうなんだ・・そうか・・それでも…そうなんだ・・。
駅員さんもいるわけでなし、ここは日本ではないのだ・・。
追いかけたいけど地下鉄は走り出し、
電車内を逆走しても意味はなく、とにかく頭を落ち着かせ、対処を練る。
でも全くどうしていいか分からないので、
降りた駅で困った時の「在フランス日本大使館」に電話してみる。
Oさんという老年(多分)の男性が出て、今あったことをしどろもどろに説明する。
きっとこんな日本人多いのだろうに、Oさんは大変優しく同情してくださり、
穏やかな口調で「お金は戻ってこないでしょう。」と現実を突きつける。
そうですか、そうですよね、そうでしょうよね、
「何かあったらまた言ってください。」
はい、既に今が何かあったからなのですが・・
いや、でもとにかく日本語で優しくそう言ってくれるだけで救われた。
癒しのOさん。ありがとう。老後お役に立てることあれば連絡を。ヘルパー資格持ってます。
ああしかし、大使館に電話をしても現状変わらず・・。
誰かに電話をかけたくなったけど、心配かけるだけなので止めておく。
Hさんがあまりにも優しく、母なる愛で私を慰めてくれるものだから泣きそうになった。てかちょびっと泣く。
涙がユーロに変わることはないのだし、
ここは私が落ち込んでてはいけないのだ!とにかく荷物を送るのを優先させてもらおうと、クロネコさんに移動する。
(パリにもあるクロネコ支店・日本人対応)
Hさんが荷造りなどしている間も終始、先ほどの違和感を繰り返し思い出す。
ああ、輝く太陽も素敵な服もサンドウィッチも、
今の私には全て手の届かないもの・・
さようなら、私の財布、全財産、地下鉄の回数券、七福神のお守り…。
「ああ、パリで一文無し・・(正確には1セント無し・・)」
バッキャロー!スリのバッキャロー!私のバッキャロー!
(こんな時でもバッキャローとバッファローって似てるとか思ってる私バッキャロー!)
フランスから帰って、母と電話。
母「おフランス楽しかったかい?」
私「うん…実はさ・・私、フランスでスリにあって、一文無しになっちゃったさ・・」
母「あら~!あんただもの!」
人間だもの、私だもの、あんただもの。
後はハイスピードで行こう。
11につづく・・
「明日持っていくぞうきん、あんたは絶対忘れるんだから、今のうちにカバンに入れておきなさい。」
と言った。
やや?まだ忘れてもいないのに絶対とは失礼な!
私は「うん、後でやる。」と言って漫画を読んでいた。
母「後でやるって言って、あんた絶対忘れるんだから、今入れなさい。」
私「大丈夫、後でやる、絶対忘れないから。」
母「そう言って絶っ対あんたは忘れるんだから入れなさい!」
私「後でやる、絶っ対忘れないもん!」
母「あんたは忘れる人なんだから。」
私「もう絶っっ対忘れない!忘れない人になった!」
兄登場「お前そう言って絶対忘れるぞ。」
私「(ぬなっ!)絶対忘れません~。絶対に絶対に絶~対に忘れません~。」
兄・母「やれやれ、そういってこの子は忘れるんだから。」
私「忘れませんたら忘れません、絶対忘れません~!
そんな何回も同じこと言われなくても分かってます~!」
と散々生意気な口を利いておきながら、次の日、ぞうきんを忘れた…。
学校から帰った私に母は一言。
「ほらね、あんただもの。」
<六日目~一文無し~>
Cさんを見送り、
私たちは荷物を郵送するため、クロネコさんに立ち寄ることに。
地下鉄北駅:Gale du Nord
地下鉄やRERへの乗り継ぎができ、多くの人が行き交う駅。
この日はパリのホテルをチェックアウトし、
人形劇のフェスティバルが開催されているシャルルビル・メジェール市に移動するので、私たちはスーツケースを持ち歩いていた。
Hさんのスーツケースは、大きめの最新型。とても軽量で車輪もしっかりしている。
私のスーツケースは、知人が「重たいから捨てる」と言ったのをもらったもので、
空の状態でも重たい。捨てたくなるくらい重たい。
そしておまけに車輪が内側についているので、安定が悪い。
おまけのおまけに、旅に出て早々に車輪のゴムがはがれてしまい、キュルキュル鳴って更に重くなった。
友だちがスーツケースを倒さずに颯爽と歩く姿がエレガンスでうらやましい。
私のスーツケースは、まるでグランドで引くタイヤだ。重いコンダーラだ。
石畳の上スーツケースを引くと、あっという間に手に豆ができた。
あ~重たいね~。やっぱ新しいの買えばよかったよ。
パリに来てからも何度も買おうかと思ったのだが、節約したかったのと、
古いケースの捨て方が分からないので、今回はガマンだ!
あ~しかし重たいね~。
おや、地下鉄に乗ろうとしたら、若い女性がやってきて、重いスーツケースを一緒に持ってくれたよ。
親切だな。ありがとう。
フランス、親切な人が多いな。
こないだも重いカバンを持ってあげてる人がいたよ。
今日も地下鉄、混んでるな。ぎゅうぎゅうだ。
なかなか奥に入れないな。あ、友だちは何とか乗れたみたいだね。よかったよかった。
あれ、あの…一緒に持ってくれてるスーツケース、もう置いてくれていいんだけど・・
ああ、でもこんな混んでる中で持ってしまったから、置くと彼女の足か私の足に乗ってしまうのかな。
重いのに一緒に持ってもらっちゃって申し訳ありませんね。
優しい人だな、ありがとう。
あ、地下鉄の扉がしまるよ、
あ、やっとスーツケース置いてくれた、
あれ?あなたは降りるの?
あれあれ?車内、混んでると思ったら空いてるね。
皆いきなり降りちゃったね。どうしたのかな。
私のカバンを持つために来てくれたのかい?親切にありがとう!
・・でも、何だか違和感。妙な違和感。
親切に違和感。さっきの窮屈さに違和感。
・・・・
「あ・・財布がない・・」
何度確認しても財布がない。財布がないんだ。
頭がパニくる。えっと、何で、いつ、今、女の人、スーツケース、重い、
他にも人、私を囲んで、押してきて、窮屈、財布、
全財産、人形劇、貯金、私、お金、ないから、私、一文無し・・
「あ!カメラ!携帯電話!」と思ったらそれは別に入れていたので無事。
あ~よかっ・・いや!良くない!
「やられた!スリだ!」
周りの人が同情の目を向けてくる。
そして入り口に座っていたおばさんが、
「多分今の子達がやったのよ。」と目と指差しで教えてくれる。
そうなんだ・・そうか・・それでも…そうなんだ・・。
駅員さんもいるわけでなし、ここは日本ではないのだ・・。
追いかけたいけど地下鉄は走り出し、
電車内を逆走しても意味はなく、とにかく頭を落ち着かせ、対処を練る。
でも全くどうしていいか分からないので、
降りた駅で困った時の「在フランス日本大使館」に電話してみる。
Oさんという老年(多分)の男性が出て、今あったことをしどろもどろに説明する。
きっとこんな日本人多いのだろうに、Oさんは大変優しく同情してくださり、
穏やかな口調で「お金は戻ってこないでしょう。」と現実を突きつける。
そうですか、そうですよね、そうでしょうよね、
「何かあったらまた言ってください。」
はい、既に今が何かあったからなのですが・・
いや、でもとにかく日本語で優しくそう言ってくれるだけで救われた。
癒しのOさん。ありがとう。老後お役に立てることあれば連絡を。ヘルパー資格持ってます。
ああしかし、大使館に電話をしても現状変わらず・・。
誰かに電話をかけたくなったけど、心配かけるだけなので止めておく。
Hさんがあまりにも優しく、母なる愛で私を慰めてくれるものだから泣きそうになった。てかちょびっと泣く。
涙がユーロに変わることはないのだし、
ここは私が落ち込んでてはいけないのだ!とにかく荷物を送るのを優先させてもらおうと、クロネコさんに移動する。
(パリにもあるクロネコ支店・日本人対応)
Hさんが荷造りなどしている間も終始、先ほどの違和感を繰り返し思い出す。
ああ、輝く太陽も素敵な服もサンドウィッチも、
今の私には全て手の届かないもの・・
さようなら、私の財布、全財産、地下鉄の回数券、七福神のお守り…。
「ああ、パリで一文無し・・(正確には1セント無し・・)」
バッキャロー!スリのバッキャロー!私のバッキャロー!
(こんな時でもバッキャローとバッファローって似てるとか思ってる私バッキャロー!)
フランスから帰って、母と電話。
母「おフランス楽しかったかい?」
私「うん…実はさ・・私、フランスでスリにあって、一文無しになっちゃったさ・・」
母「あら~!あんただもの!」
人間だもの、私だもの、あんただもの。
後はハイスピードで行こう。
11につづく・・
by ayajijo | 2011-10-24 00:19 | 旅