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小便小娘

春ですね。

今でこそ、エレガンスな女性になりたいと思っている私、女性でございますが、
子どもの頃、「男になりたい!」と強く思っていた時期がある。

きっと誰もが、一度は異なった性になってみたいと思うのではないだろうか。

男になりたい。
男に憧れる。
男がうらやましい。

ああ、どうして母さんは私を男に産んでくれなかったのか・・。
ああ、男だったらいいのにな~・・

さて、なぜ私がそんなに男に憧れていたのかというと・・

私は立ち小便というものがしてみたかったのだ。

男なら!
外でもどこでもおしっこができる。
(さすがに今はあまり見かけないものではあるが、
 私が子どもの頃は、よく見かけていた。)

女は!
外で尿意を催しても、まず隠れる場所(例:とうきび畑)を探さなければならない。
(さすがに今もそんな人は見かけないが、
 私が子どもの頃は、私はよくそうしていた。)

外で開放的にする小便はさぞ気持ちよいのだろうな。
ああ、背筋を伸ばし、立ち小便をする姿が羨ましい。

私はおじさんの立ち小便姿や小便小僧、
更には雄犬の小便姿にすら羨望の眼を向けていた。

あ~、私も男になりたい。
男になって、一度でいいから立ち小便がしてみたい!

毎日そんなことばかり考えて過ごした。

ふと・・
女の自分だって、やれば出来るのではないかと思い始めた。

私はまだチャレンジしていない。
挑戦せずして成功はない。
夢は叶えるもの。
論より証拠、案ずるより産むが易しだ。

もし成功すれば、夢の立ち小便生活が始まるのだ。

幼少期(今も若干)、好奇心のみで生きていた私は矢も盾も堪らなくなり、
とにかく実践してみることにした。

場所は自宅のトイレだ。

足元より一段上にある和式便器。
私は精神を集中させた。

失敗は許されない。

失敗すれば床は濡れ、確実に母さんに怒られるだろう。
絶対に見つかってはならない。
これは秘密裏に進められなければならない孤独の挑戦なのだ。

ちょっとのミスをも避けるため、
私はズボンとパンツを脱いで棚に置いた。

下半身丸出しで、準備完了である。(再度言うけど、幼少期ね)

ひとつ深呼吸をした。

後は尿意を待つだけだ。
が、尿意は待たずしてやってきた。

(私の長年の夢が今叶えられる!)

そして、
勢いよくおしっこは放たれた!!

・・・あ・・

あ・・!・・ち、違う・・あわわ・・こ、こんなんじゃない、あれれ、止まらない!
ど・・どうしよう・・。

和式便器に向かって放物線を描くはずのおしっこは、
予想を覆し、直下した。

一旦放ってしまったおしっこは止まることを知らず落下し、
足や床を濡らしていく・・。

(こんなはずでは・・。)

途端、私の目からみるみる涙が溢れてきた。
止めようと思ったおしっこも涙も止まらなくて、
私は泣いた。おしっこをしながら大泣きに泣いた。

その泣き声に母がやってきて、
「どうしたの!?」とトイレのドアを開けた。(幼少期は鍵をしていない)

下半身丸出しでおしっこをもらしている私を見て驚く母。(そりゃそうだろう。)

「どうしたの!?どうしたのさ??
 具合悪いのかい!? 怒らないから言ってごらん?」

そう、母は怒らなかった。
そして優しかった。
トイレにいるのにおしっこをもらし、
何故かパンツもズボンも脱いで棚に置き、わんわん泣いている私の姿に、
ただならぬ雰囲気を感じ、母も心配してくれたのだろう。

でもね・・母さん、
違う、違うんだ。

私は怒られるのが怖くて泣いていたんじゃないんだよ。

あれは、
私が人生で初めて流した、
挫折の涙なんだ・・。

小便小娘_b0192991_0265381.jpg

by ayajijo | 2012-04-11 18:55 | 思い出  

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